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気の向くまま、思うがままの行動記録ですよ。
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    短文連載8

    なんか先週に書き上げておきながら今日まで存在忘れていましたよ。
    脳みそ起動しようね、そろそろ…………!(汗)

    キャラブックとか今月号とか。色々叫びたい事があるんだけど。
    言葉がまとまらないから色々断念(涙)

    とりあえず、師匠素敵。あの人いつでも父親になれるよ。なんだよ、あんなにアレンの事大事にしていた癖に、とんだツンデレ(を通り越す過酷さだが)じゃないか。
    でもあんな風にずっと見守ってきて、面倒見て傍にいて、それが全部その子を殺す事を前提の関わりだとしたら。
    ………師匠、どんな思いでアレンを弟子にしたんだろうなぁ。
    旅の間、どれだけの葛藤と自己嫌悪と戦ったんだろう。欠片もおくびも見せない大人な師匠が素敵だけど寂しいよ。

    そんなお話とは無関係の、ラビとアレン、やっとこお出掛け編でございますー。




     閑散とした道を二人は歩いていた。どこに向かうか、少年は知らない。面白い場所だと笑った青年と、勘づいたらしく迷子にならないよう注意した老人だけが解っている。
    目的地が解らない、それ自体に不安はなかったが、どうにもここまで歩いた違和感が拭えなかった。
    「ほら、こっち!」
    明るい声に惹かれ、青空を見上げるように少年は振り返る青年を見遣った。
    「………人、少ないですね」
    きょろりと辺りを見回しながら、ここまでの道程で出会った人の少なさに少年が不思議そうに呟いた。
    時間的にも、まだまだ人は出歩くし、もっと多くの人に出会すものだと思っていたのだ。
    そんな呟きに、青年はバレたかと戯けるように舌を出す。
    「ああ、裏道ばっか狙ったからな。一応、人とはあんま、な」
    はっきりと告げない青年の言いたい事は、解る。そして何故はっきり告げないかも。
    初めてそれを教えられたとき、余裕なく噛みついてしまった。
    今も意識は変わらない、けれど。それでも定めた覚悟は、あの頃の他愛なさなど省みる事もないほど強固だ。
    そう教えるように、気遣ってくれる青年に、少年は静かに声を落とした。
    「……僕の左目がある時は、気にしなくても平気ですよ?」
    「それだとアレンが気を抜けないさ。こーゆーのは一人で背負うもんじゃないの」
    見えるから、解るから、だから無理を重ねて当たり前だと思ってしまう思考回路は、少年の困った悪癖のひとつだ。
    「俺らが気楽なら、アレンだって気楽にいられる場所さ」
    「……なんだか、ラビがお兄さんみたいですね」
    優しく告げる声に、少し呆けたように少年が囁いた。それは思わず漏れた、そんなささやか音だった。
    「俺のが年上なんですけど?」
    時折年下でも見つめるように我が儘を叶えてくれている事を知っているだけに、青年の反論の声は弱く、どちらかというと拗ねた響きだった。
    それにやはりクスリと柔らかく笑った少年は、悪い意味ではないのだと呟いた。
    「そうなんですが。なんだかラビは、あまり年の差、感じないから」
    「ユウとの方がそんな感じさ」
    「あれと同格扱いしないで下さい」
    途端に笑顔に亀裂が入ったかのように、声をも硬質化させた少年に吹き出しそうだ。なんだかんだいって二人が相手を嫌っていない事なんて、誰の目にも明らかだというのに、当人達だけは認めないのだ。
    仕方なしに竦めた肩でそれを流し、青年は見えてきた目的地を指差した。
    「はいはい。ほら、あれさ」
    話題を変える仕草に乗った少年は、その指先が示す先のものを見ながら目を瞬かせた。
    「市場、ですか」
    今はもう、夕方が迫る頃合いだ。意外にここまで来るのに時間がかかってしまったため、あまり遊ぶ時間もないだろう。
    それなのに、まだそこにある市場は活気があり、人の往来も減ってはいない。空の色と合致しない、不思議な光景だった。けれど進み行けばどんどんとその市場は近付いていく。幻でも何でもない、確かにそこにある現実だ。
    「そ!夜までやってるんさ。品物が微妙に変わっていって、どの時間帯でも楽しいんさ〜。夜になればダンスホールもある筈さ」
    「夜まで!?長いですね」
    驚いたように辺りを見回している少年の口は開きっぱなしだ。市場も祭りも見かけた事はあるが、どちらかというと遊ぶ為に立ち寄った事はない。
    物珍しさに疼く好奇心に、真っ白な少年の肌が淡く色づいていた。
    「まあ期間限定の、言うなれば祭りみたいなもんだから。奇怪の報告はないし、行方不明の噂もないから、AKUMAも暴れちゃいないと思うけど」
    言葉を途切れさせ、青年は少しだけ鋭くした眼差しで少年を見据えた。
    「もし見つけたら、ちゃんと報告すること。突っ走んなよ?」
    「解ってます。あ、ラビ、あっち、ブックマンが好きそうです。古い本が一杯!」
    困ったような顔をすぐに輝かせた少年が指差した先は、多民族からなる雑多な古美術の類いを扱う露店だ。その中の一角、本が痛まぬように紗のカーテンを模した布がさらさらと流れるその奥に、重めかしく静かな存在感を示す古ぼけた革の背表紙が見えた。
    確かに興味を引く場所だ。本だけでなく、古美術も骨董というよりはその民族特有の品が多く、恐らくはここで出会わなければ一生出会(でくわ)す事のない品達だ。
    「………ちなみに、そういうんは俺も好きって、覚えといて」
    「知ってますよ」
    きょとんとした眼差しに他意はなさそうだった。敢えて言うならば、この場にいる青年はその目で確認出来るが、いない老人は出来ない。から、少年が代弁した。そんなところかもしれなかった。
    「まあいいか。じゃあ、ちっと見て回るかな。アレン、見たいもんあったら言うさ。ティムいないから迷うと帰れんよ」
    苦笑ひとつで受け流し、青年は少年の髪をかき混ぜるように撫でた。
    ……遠慮してこっそり眺めるばかりいると、いつの間にか少年の歩幅は小さくなってはぐれてしまう。過去に幾度かあったそれを窘めてみれば、クスクスと少年は笑った。
    「いざとなったらラビを捕まえて引き摺りますから、ご心配なく!」
    にっこりと明るい笑顔で言った少年は、一歩前を進んでいく。
    その細い背中を見つめて、緩やかに青年は溜め息を吐く。
    「………ホント、それ位してほしいもんさぁ」
    それでもきっとこの子は飲み込んでひとりで頑張ろうとしてしまうのだろう。
    思い、もう一度小さく溜め息を落として、青年は大きく一歩を進むと、隣を歩く白い横顔を見つめた。


    ………何も背負う事なくこの傍らに。


    不可能と知っていながら、せめて今一時だけでもと、祈った。

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