そんなわけで三日天下終了ですよ!何って、うん、毎年の事ですが、恵ちゃんに年齢追いつかれました。三日しかお姉ちゃんでいられないこの悲しさ。←末っ子は『姉』というものに憧れる。
まあそれはさておき。誕生日おめでとう!ささやかながらのプレゼントでございますよ。
………うん、相変わらずの試行錯誤のラグヴァンです。
君からいただいたイラストと比較するとどうよ、とか考えるけれど、深く気にしないでくれると嬉しい。一応私の精一杯…………!
こんなんだけどお受け取りくださいませ。そして今年もまたよろしくですよ!!
相も変わらず世界観もキャラも知らずに、でぃしでぃあ公式HP覗きながら『?』に埋め尽くされつつ書きました。いやな予感する方は見ないでね!
そんなわけで畳んだ先からご閲覧くださいませ〜。
許可をいただいたので元ネタ(?)暴露。あえて右側と左側を逆転させたんだぜ☆いつも通りでない事をされた時の動揺と仕草を書くのは楽しい。
そんなわけで元ネタイラスト&コメはこちらでございます。→
休憩にとその木陰を選んだ理由はたいした意味はなかった。そう誰もが思う中、確かに理由はあるのだろうと軽く吐息を落とすように片眉を上げて、ジタンはヘラリと笑って木立の方に歩いていく背中を見送った。
「またかー」
ぽつり、それに聞こえない程度の声で呟く。歩いていく背中には長い黒髪が揺れている。迷わず進んでいる癖に、どこか惑いながら歩む彼のようにゆらゆらと。
「………そのようだな」
変なところにらしさが現れるものだと眺めていれば、背後にいたらしいライトニングが小さく囁いた。
やはり、気付いていての休息だったのか。思い、当人にも気付かせない静謐な優しさに嬉し気にジタンの目が細まる。
それを察しているのか、ライトニングの顔は逸らされたままだ。それを気にする事無くジタンは笑う。存外照れ屋なのかな、などと考えた事は当人に気付かれるわけにはいかない。
そんなジタンと同意見なのか、バッツの手が伸び、くしゃり、ジタンの頭を撫でた。振り仰ぐように向けた視線の先、楽し気な瞳が輝いている。
「あの人あーゆーのは意外と解り易いよなぁ」
………これはからかいに行く気満々だ。そう感じ取ったジタンと同様、バッツの声の質に釘を刺すようにライトニングの眼差しが鋭く彼を射抜いた。
「どちらにせよ、当人の問題だ。すぐに回復もするだろう」
紡がれる声は静かだが、反論を許さない芯の強さに染まっている。相変わらず艶やかな人だとにんまんりとしてしまうのはどうしようもない。
ジタンと二人、視線を交わし合ってついほころぶ眼差しくらいは許容範囲であって欲しい。………孤高に咲くしなやかな光の華を愛でるのは、男の性のようなものだ。
「干渉は無用だ。休憩が終われば即進む」
だから、彼女の声の牽制といたわりに、木を振り仰ぎながら辺りを見回す間抜けな男の背中を眺めつつ、頷いた。
「了解〜」
ふらふらのらくら、いまいち掴み所が無い癖に、知らず誰もの懐に入り込んでいる。その癖、そっと引いた境界線を時折垣間見てしまうのはこちらの穿った眼差しか。
からかって一緒に戯けて笑い合えば、少しくらいあの不釣り合いな陰影を取り除けるだろうに、こうして一歩離れている時はなかなか難しい事も解っている。
これは太陽が必要だよね、と嘯くように囁くバッツの声を頭上に聞きながら、ジタンはこてんと首を傾げて空を見上げ、煌煌と照る光を見つめた。
キョロキョロと首を巡らせながら、川から戻ってきたヴァンが駆け寄ってくる。その姿を片手をあげて迎えながら、座っていていた岩から腰を上げようとすると…それを止めるように声が紡がれる。
「なあラグナ知ってる?」
………戻ってきて第一声がそれか。とは流石に言わなかった。ただジタンは苦笑して少し離れた木の影に立っている背中を指差した。
「ん?ラグナならほら、あっちで黄昏れてるよ」
その言葉と指先に導かれ、ヴァンの視線が流れ……目視した先の見慣れた背中にパチり、瞬きを落とした。
立っている。それは確かだ。木陰に隠れるように、ただ突っ立っている。いうなれば、それだけだ。何を理由にそこにいるのかも、何の為に立っているのかも解らない。ただそこにいる、それだけが解る情報だった。
怪訝そうにそれを見て眉を顰めたヴァンは、そのままジタン同様にラグナを指差し、問い掛けた。
「なにやってんの、あれ」
心の底から不可解そうな声に、つい小さくジタンは吹き出した。ヴァンの意見は正しい。何がやりたいと問われて、あれは解答を得られる類いではない事は明白だ。
敢えてそこに答えを見出せというならば、おそらくは何もしない事を願っている、だろうか。
「だから黄昏れてんじゃないの?多分?」
くすり、困った大人を見遣るように笑んで告げるジタンをヴァンはただ真っ直ぐに見つめ、その後、少しだけ考えるように中空に視線を向けた。
その僅かな間の間流れる空気はそう居心地の悪いものではなかった。ただそんなヴァンを岩上から眺めている。
ヴァンも、意外と掴み所のない人間だ。彼の場合は隠しているとか演じているとか、そんな理由ではないだろう。……純然と、その意識が自分では手繰れない。
それはあるいは彼自身にとってよい事かどうかもまた、解らない。ただきっと、この少年は自らがそうすると定めた事には、躊躇いもせずに走っていってしまうだろう。周りの思惑も意志も願いも無関係に、それがより良いのだと己が納得してしまえば揺らぐ事もなく、躊躇わない。
「そっか。サンキュー。………おーいラグナー」
そうして、そんなしなやかな眼差しはふむと一度頷いたあと、軽く手を上げて礼を言いながら駆け出してしまった。
その鮮やかな切り替えに、ジタンは目を丸めて見送ってしまう。迷いなく駆けていく背中。その先にいる、まだ振り返らない影。
小さく、それに笑んだ。多分、それは喜びに染まって。
迷いがあるから、ふらつき惑い、それでも大人たれと歩み、足先を踏みしめ進む男と、ただ全てを見つめ、あるがままに受け入れ、その先を己の意志で見出し掴み、駆ける事を躊躇わない少年。
ちぐはぐな歩幅は、それでも何故か重なるように進むのだ。
「………それでも行っちゃうところがヴァンだよな……」
こんな風に、躊躇う事無く駆けていくからこそ重なるのだと、はたして知っているのかいないのか。
多分無自覚だろうと笑いながら、ジタンは空を見上げた。
キラキラと地上を照らす日差しの意味を理解したように、その唇は満足げに笑みを描き……そのまま岩の上、ポフリと横たわった。
木立の傍らでぼんやりとしていると、不意にさくさくと歩む足音が響く。
振り返らなくても解る。これは、ヴァンの足音だ。重厚な甲冑じみた両足の奏でる金属音の薄い、平素の靴の音に近い足音。
タイミングが悪いなぁと微かに思いながら、それでも拒む理由を掲げる事も出来ないので、クツリと唇だけで笑んで、相手の声を待った。
何か見つけたのか。それとももう出発だという声掛けだろうか。……もう少し、のんびりと空を眺めていたいところだが、それは許されないかもしれない。
思い右側に近付いた足音と気配。それに、小さく目を見開いてしまう。
………いつもヴァンは当然のように左側から顔を覗かせる。多分、理由も何もなく、ただの癖か何かで。そうして自分は、だからこそいつも少し仕方がなさそうに笑って彼を見下ろし答えるのだ。
それはいつだって変わらず、自分がこうしてひとりで少し離れていても、みんなと一緒に話をしていても、気付けば彼は左側にたたずみ、じっと大きなその瞳で自分を見上げる。
まっさらなまま、純度の高い宝石のように透明に自分を映す、筈なのに。
右側に、彼が来た。多分、これもまた、特別に意味などない筈だ。こちらの方が木に近く、日陰で過ごし易そうだとか、きっとそんな理由だ。……と、ほんの数秒の間に己に言い聞かせている自分は、かなり滑稽だろうか。
たかが立ち位置ひとつでそんな風に悩む事自体、愚かな話だ。随分と煮詰まっていると小さく唇から吐息を落とした。
「なあラグナ、どっか痛い?」
その直後に響いたきょとんとしたその声に、肩を揺らさなかった自分に拍手を送りたい。
微かに息を飲みはしたが、それも軽く首を傾げた仕草で誤摩化し、漆黒の髪の細い檻の先に見え隠れする、僅かな木漏れ日に映える金の髪と青い瞳を見つめた。
「へ?別にどこも……怪我してねぇぞ?」
「うん、だよな」
「相変わらずだね、ヴァンくんは。質問と解答が一致しているようでずれてる」
軽く返した答えには軽い同意と真っ直ぐな眼差しが返される。それに少し眉を垂らして苦笑した。声は、多分震えはしなかった筈だ。
響いた音を誤摩化すように、軽い頷きとともに、緩く肩を竦めた。顔を見なくとも仕草だけで話が成立するのだからジェスチャーは有り難い。あるいは、そうしたもので誤摩化す事を許されている自分という立ち位置か。
思い、漆黒の下、苦笑が色濃く浮かぶ。
「むしろ、ヴァンくんこそ何かあったのかな?」
やんわりと食むように問う声は、そっと落とされる吐息によく似た余韻で響いた。ぱちり、ヴァンはひとつ瞬きを残してラグナを見上げる。
「ないよ」
「………あっさりだなー。今なら特別サービスでお話聞いちゃうよ?」
まっさらなままの声にぽんと肩を叩いて戯けた声を返せば、話に乗るだろうか。そんな意識の片隅で伸ばした指先に彼の肩が触れる。揺れもしない、驚きもしない。ただそこにたたずむ眼差しと同じ、揺らがない背筋。
クラリ、自身こそが揺らぎそうだと、微かな目眩に似た酩酊を覚えて、ラグナはそっと手を下ろした。
それを追うように微かに傾げたヴァンの首筋。同時に逸らした視線を捕らえるように声が響く。
「なんもないっての。んー…まあ、うん、いっか」
「?」
「そこにいればいいよってこと。いいだろ?」
言うと同時に勝手に座り込んでしまう。もはや自分がここを立ち去るという権限はないらしい。身勝手とはまた少し違うヴァンの物言いは、何故か相手をそれが当たり前のような意識に染め上げるから不思議だ。
「………まあ、いいけどね」
小さく苦笑して、そっと吐息を落とす。さらり、それにラグナの髪が揺れた。
座ったまま見上げたその光景に、ヴァンは目を瞬かせて……次いで、眩そうに眇めると、その腕を伸ばした。
それは空を掴むように、太陽に透かすように真っ直ぐに伸びて………何故か空にも太陽にも似つかない黒髪をその手のひらに乗せ、掴むと同時に……………思いきり引っ張った。
「アデ?!ちょ、何、ヴァン?!本当に痛いんですけど?!」
予測していなかった唐突な攻撃に、ラグナの膝が少し偏り、痛みを軽減するように身を屈めた。
それをぱちり、目を瞬かせてヴァンは見遣り、パッと手を離す。少しだけ驚いたように丸まった瞳が、その所作の無意識を教えるようだった。
それにラグナが小さな苦笑を落とすと、ヴァンはその腕をくるりと返して頭の後ろへと回し、腕を組む。変わらない、いつもの仕草。
「あ、悪い。何か邪魔っけだなーって思ってさ」
変わらない、いつもの声音。
そしていつもの如く、あどけなさを灯しながらも虚偽を見抜くように真っ直ぐと見つめる事を躊躇わない瞳が、瞬きもせずにラグナを射抜く。
「邪魔って……そりゃ長いけどさー」
微かに飲み込む呼気を、戯けるように小さく吹き出した吐息に混ぜ込み隠し込む。
そっと落とした睫毛の先、降り注ぐ明かりに照らされて、瞼の裏は柔らかく光を教えて輝く。それを眩そうに、そっと薄目を開けて取り零すようにラグナは見つめる。
…………傍らの、少年を。
「そうじゃないけど。あれ?………そうかな?」
少し首を傾げて呟きながら、段々と繋がる言葉が疑問系に変化していく。
ちらり、眼差しだけで見下ろした先、微かにヴァンの眉間に寄ったシワ。珍しいと、思わず目を丸めてしまった。
「ヴァン?」
「ま、いいや。ほら、やっぱ顔見えた方が話し易いな」
問うように呼んだ名前。…………同時に返された、屈託のない、けれどまっさらなまま全てを見つめる笑み。
「……………っ」
射竦められるように、呼気を飲んだ。多分、それは無様なくらいはっきりと見て取れるものだっただろう。
が、それを見上げたヴァンは楽し気に目を細めて笑い、もう一度ラグナの髪に片腕を伸ばし指に絡めると、今度はその顔を隠すようにさらり、流した。
「あ、でも、顔見えない方がカッコいいかもしれねぇけど」
「ちょ?!それは流石にひどいと思うよ、ヴァンくん?!」
からかうように……けれど多分何も考えない素のままに告げるヴァンの声は、楽し気に響いてラグナが情けない声を落とした。
それに腹を抱えて笑い転げるヴァンを、むうっと顔を顰めたラグナが仕返しとばかりにその頬に手を伸ばす。
……微かな影でそれに気付いたヴァンが目を瞬かす間もなく、ラグナの指先はまだ柔らかさを残しているその頬をふにりと伸ばすように軽く抓った。
その両手を引き離そうとするヴァンとラグナの間で、些か大人気無い騒ぎが起こると、少し遠巻きに眺めていた面々が肩の力を抜くように小さく吐息を零した。
「…………何をやっているんだ……」
ぽつり、珍しくもスコールが彼らの戯れ合いに遠巻きながらも言葉を添えて嘆息する。
けれどその声は少し、安堵を滲ませている。少なからず、ラグナの変調を気にかけていたのかもしれない。
そんな素直でない態度にからりと笑い、隣に立っていたバッツが明るく声を響かせた。
「いいじゃん、楽しそうだし。俺も行こうかな〜」
「止めろ、話がこじれる」
それを即座にライトニングが制止の言葉をかけるのを、バッツはヘラリと笑って振り返った。……なんだかんだ言いながら、彼女は周囲を見ている。
何を知らなくとも、必要なものが何であるのかを、何とはなしに知っているのだ。
「そうそう。すぐに戻ってくるしね」
それに同意するように、バッツの隣に座っていたジタンがしたり顔でバッツに告げる。
………眼差しは、戯れ合う傷だらけの大人とまっさらなまま自身の傷に気付かない少年を見つめたまま。
せめて、その一時で心に疼く痛みを包み、また笑みに染まればいい。
………何も持ちえない真っ白なままの自分達とて、重ねた時を経て過去を思うのだと、微笑みながら。
明るく響くその声が舞い戻るまで、暫しの休憩は続いた。

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