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気の向くまま、思うがままの行動記録ですよ。
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    無題

    ちょっと支部で連載している黒い子のお話の短文をこちらにも置かせていただきますよ。







    蒼月の火黒へのお題は『君の「大丈夫」が、大嫌い』です。 http://t.co/p8Sol49I7G
    いつだってひとりで背負うから、その象徴の言葉が、時折凄く、悔しい火神くん。
    そうじゃなければ頼もしい相棒の言葉なんだけどね。※まだくっついていないけど渡米後のお話です。



    きゅっと小さな唇を引き結んで、黒子は少しだけ眼差しを揺らした。
    「大丈夫です」
    囁くようなその声は涼やかで、他の誰かが聞いたならほっと安堵の息を落とすだろう。けど、俺はそれを聞き咎めて顔を顰めた。
    「こーゆー時の大丈夫は信用しねぇ」
    ぎろりと睨みを効かせて呟いた声は、存外低く空気を震わせた。……何せ黒子の唇の端は少し切れていて、頬が腫れているのだ。それで大丈夫など、よく言えたものだと思う。しかも見事にいつも通りの顔つきなのだから、唇に傷がなければ見過ごしかねない程だ。
    きっとすぐに冷やしのだろう、唇の傷ばかりが目立つが、それでも明らかに殴られただろう事は解る。ついでに言うなら、先程荷物を運ぶ時、左肩を庇っていた。きっと、そこにも痣なり何なりがある筈だった。
    だからこその咎めを、けれど黒子は小さく眉間に皺を寄せて、けれどすぐにそっと落とした瞬きひとつでそれを隠し、ひたと俺を見上げてもう一度同じ言葉を口にする。
    「………大丈夫です」
    頑固は昔からだ。こうと決めたらこいつは口を割らない。という事は、きっと誰かを庇ったのだろう。その上、怪我をしても逃がさなくてはいけない相手と言えば、候補は限られる。
    今までも幾度かあった。変わらない正義感と信念を曲げない意固地さ。それに傷を負う事よりも心を殺す事をこそ嫌うこいつは、プレイスタイルで殺し続けた感情を解き放つように、私生活では我慢を知らない。主に、己の理想や信念を穢される事を厭い、人を傷つける行為に真っ向から意義を唱えてしまう。
    それが悪いとは言わないけれど、せめてもう少し己の身を守ることを覚えてからにして欲しいと、幾度言えば解るのだろう。全くもって、その点に関しても昔から変わらなかった。
    テツは馬鹿だと幾度も青峰がぼやいていた事を思い出す、こんな時ばかりは、青峰の言葉に多いに頷かざるを得ないと思う。何せ、俺も同じ言葉をこいつに投げかけるしかないからだ。
    「女庇うのはいい、当たり前だし。見過ごせないのも当然だ。けど、だからって怪我した事まで隠すな」
    勘でしかないけれど、過去にもあった無知な観光客がふらりと迷い込もうとする裏道での危ういシーンを、どうせこいつは割って入って逃がしたのだ。時には己が囮になりさえする。自分のミスディレクションがこういう時には有効だと、最初の時にやはり傷を負いながら笑ったこいつを馬鹿と怒鳴った。
    「………」
    流石にそれは覚えているしばつが悪いのだろう。しゅんと黒子が頭を項垂れさせて口籠った。
    その旋毛を見下ろしながら、はあと溜め息を落とす。
    「俺が怪我するの嫌がる癖に、お前が怪我すんな、バカ」
    俺が試合でのラフプレイで筋を痛めでもしたら血相を変えてケアに当たる癖に、こいつは自分の怪我には無頓着だ。服に隠れて昴にバレないならそのまま放置しかねない。きっと頬の腫れだって、ひどくなければそのままにしたに決まっている。
    気付かれない事に慣れてしまっているから、こいつはそんな風に自分を守る事がヘタクソだ。影が薄いとかそういう事以上に、隠れる事がうま過ぎる。………ついでにいえば、きっと昔の古傷でもあるんだろう。
    だからといってそんな悪癖を許してやるつもりもない。傷なんて、つけない方がいい。抱えない方がいい。それが大事な奴なら尚更だ。自分だってそう思って俺の事ばっかり守ろうとする癖に、とんとこの馬鹿は自分が同じ思いに包まれているという事を忘れる。
    ゆらりゆらり薄青い頭が揺れる。きっと悩んでいる。俺の声、少し掠れてた。情けねぇけどまだ感情をうまく制御なんて出来ない。ことこいつに関しては尚更だ。
    いつだって咆哮を上げそうなくらい、こいつには揺さぶられるんだ。それを必死に押し殺してずっと傍にいた。今も、傍にいる。
    まだ俺のものに出来ない、それでも約束の間は傍にいてくれる、こいつ。
    「…すみません、でも」
    「大丈夫は聞かねぇからな」
    むすり、顔を顰めて黒子の肘を掴み、そのまま腕の中に囲い込む。
    痛みを与えないように、出来るだけ柔らかく腕におさめて、痛めた肩を包むように手のひらで覆った。
    ……馬鹿だ、本当に。どれだけ俺がこの腕に支えられて過ごしたか、知っている癖に知らない馬鹿。
    困ったように俺の首に額を重ね、小さく小さく黒子がすみませんと呟いた。でも、知っている。それは反省じゃない。純粋に、俺が悲しんでいるから告げた音。
    同じ事があればまたきっと、こいつは同じ事をする。それで、また俺には隠そうとするんだ。
    こうして腕に抱えて全部俺が守れればいいけれど、そんな事望みもしないこいつだから、どうしようもない。
    バカ、とまた小さく震える声で呟いて、俺よりずっと小さくて華奢な身体を縋るように掻き抱いた。

    こいつの潔い男らしさが愛おしくて、自身を顧みない意固地な真っすぐさが小憎らしい。

    ‥‥‥全部全部、俺だけのものならいいのに。


    早くこいつの背負うものが無くなって、俺の想いを吐き出しても、こいつに自由に選ぶ権利が戻ってほしい。



    そうしたら、すぐにだって掻き抱く腕の意味を教えられるのに、と。悔しくて顔を顰めながら、泣き出しそうな想いを飲み込み、薄っぺらな肩に額を押し付けた。


    ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

    貴方は火黒で『ここから始まる』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://t.co/i1WwYrGlyz 渡米後の二人、初めて想いを言葉にした時のワンシーン切り取りです。…切り取りです(重要)いつか書けるといけれど、本編には加わらない未来編です。

    そっと重ねた指先。触れた唇。
    誓うように祈るように組み合わせた指先に、額をあわせて口吻けあった。
    眇めた眼差し、互いの色が灯る。ゆらり揺れる空と猩猩緋。
    押し殺し、枯れる日を待つ花を、ほとり、言葉に乗せる。…返されたのは、苦しい程の抱擁だった。
    溺れる程のそのぬくもりに、そうと瞼を落とす。

    戦慄く唇が、もう一度確かめるように囁けば、そうと恐れるように忍び寄ったと息が、同じ言葉を紡いで唇に重なった。

    ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


    火黒へのお題は『本当の貴方が見えないの』です。 http://t.co/p8Sol49I7G 本編、同居開始後の火神くん視点。というか、心理をささやかに。

    柔らかく微笑む空色。昔と変わらないひた向きさ、全てを差し出すように捧げて尽くす献身さ。
    幼子を抱きしめこの背を支え、先に進めて力強く未来を指差す。変わらない。変わらない、のに。
    ………どうしてお前はいつも、そんな風に寂しく眼差しを揺らして俺を見るんだろう。

    いつも、あと一歩が解らなかった。


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