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気の向くまま、思うがままの行動記録ですよ。
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    SQ感想は通り越して、単行本昇華中。

    色々感想書こうかなーと思いつつも。
    なんか凹みそうな感じだったので(オイ)
    とりあえず、思うところを全部忘れて(エ)気になった部分(主に単行本)の昇華に努めてみました。

    結果、小説書く事になったのですが。

    あれ、なんか14番目との対話?
    むしろマナどうした??
    てかラビの存在どこにもないってどういうこと??
    (↑当初の予定では『暖炉の灯火』とリンクする筈でした)
    どんだけ神田とアルマに感情移入しているの?

    みたいな状態に????
    まあいいや、そんな不可解状況でもOKな方のみご覧下さいませ。





      周囲を見渡して、驚く事も出来なかった。

     真っ暗な闇の中、仄光るように自分と目の前の青年だけが浮かび上がっている。

     ジャラリと、冷たさも感じない鎖が身体を拘束しているのが解る。背中も腕も椅子に押し付けられているようだったが、それも気にならない。

     目の前の青年。知っているノアにそっくりな、青年。にっこりと笑んだその面差しすら、同じだ。

     『ソロソロ交代、ダ』

     響く声は耳には反響しない。脳でもなく、直に心に響く。甘く不快な、音色だ。

     『モウイイダロウ?十分、楽シンダダロウ?』

     「意味、解りませんね。邪魔をしたのは、あなたでしょう?」

     『オヤ?マダ、意識ガアル?』

     呟いた音に、相手は驚いたように目を丸めた。すぐに楽しげに細められた眼差しが、不愉快だ。

     「まだあの馬鹿は何も出来てないんですよ。助けないと………二人を」

     『ドウシテ?』

     「仲間だからに決っています」

     『デモ、あいつハオ前ヲのあト言ッタ。オ前ノセイダト言ッタ。仲間ジャナイダロウ、あいつニトッテ』

     不思議そうな声。傾げた首が、純粋な疑問を乗せている。

     それに顔を顰め、少年は身動きの取れない体勢のまま、睨みつける事で抵抗を示した。

     辛くて悲しくて苦しくて、そうして、大切なものすら否定してしまう、そんな激情がある事くらい、知っている。何もかもを振り捨てて一色に染まってしまう思考を、知っている。

     だから、あの苦しみから這い出させる為に、この腕で殴らないといけない事が、あるのだ。

     唇を噛み締め、少年は嗚咽など零さずに痛む全てを飲み込んだ。

     解った振りでも、独り善がりでもいい。あんな、悲しい一人劇、打ち壊す。その為の傷なら、いくらでも背負ってみせる。

     「あの馬鹿はね、言葉を知らないんですよっ!傷付きやすいからって、すぐ逃げて!辛い事、目を逸らしたって無くなるわけない癖に!!」

     『ソレモ、自己防衛ダヨ。破滅ハ悪イ事ジャナイ』

     「そんな事は知りませんよ。あんな、目が覚めたら後悔するだけの行為、認めません」

     『後悔?』

     コテンと傾げた首、楽しげな唇が、クスクスと笑みを落とした。

     それに唇を噛み締めて、少年は睨む眼差しに力を込める。

     「………あなた、ティキ・ミックと戦った時も、現れたでしょう」

     『ン?気付イタノカ』

     「身体から響く、あの耳じゃなく精神に響く音、忘れるわけがありません。イノセンスを回復させたの、あなたですか」

     『「破壊」スル事ト、「再生」スル事ハ、似テイル』

     イノセンスがノアを破壊するのは、その物質が体内に入り込み喰らい尽くすからだ。逆に、ノアがイノセンスを壊すのも同じ原理。

     それならば、破壊因子を壊せば、自己再生が開始される。それは強い圧迫であればある程、互いにそれに反発し、より強大に促進する。単純極まりない、バネの原理だ。

     「臨界点突破も、手助けした?」

     『真空ヲ破壊シテ、酸素ヲ少シ、与エタダケ。後ハオ前ノ意志。俺ハいのせんすハ嫌イダヨ』

     楽しげに応える声も眼差しも、どこか柔らかい。少しだけ……それはマナに似ていて、そう思う事に少年は吐き気がした。

     たとえ彼らが血の繋がった双子でも、似てなどいない。似る筈がない。マナはマナだ。彼は彼以外に存在しない。

     少年にとっての、唯一絶対の、特別。

     「なら、今回も出て行って下さい。僕が今戦うのは、イノセンスですよ?嫌いなんでしょう?」

     『ダカラ破壊スルサ』

     「させません。あの馬鹿は、まだやるべき事があるんですから」

     『…………無駄ダヨ。オ前ハ俺ダカラ。伯爵ガ手放サナイ。モウ、戻レナイ』

     「それはあなたを、でしょう。『14番目』。僕はアレンだ。あなたじゃない」

     『同ジダヨ。オ前ハ俺ニナル』

     「なりません」

     きっぱりと、少年の声が響いた。清々しい程、絶望を否定する生粋の生の音。生き抜く事を知った、鮮やかな音色。

     それに目を瞬かせ、青年は椅子に捕らえられた少年に手を伸ばす。

     『左目…マダ、残ッテイル?』

     呟き、青年は覗き込むように少年の顎を捕らえると呪いの傷のある左目をしげしげと眺めた。

     「触るな。お前に、全てを乗っ取られるなんて、させない。僕は僕だ。言っただろう、勝手な喧嘩に人を巻き込むなっ」

     顎を振り、その指先から逃れようとするが、当然のようにそれは敵わない。

     『マダ………ソコニ居ル?マダ、走ル?』

     「当たり前だ。まだ、何も終わってないだろう!」

     『まなノ真似、ナクナッテキテル。ナラ、少シダケ、時間ヲアゲヨウカ?』

     「はぁ?!あなたに許可される覚え、ありませんね!!!!」

     『気ガ強イ。ホゥラ、見テゴ覧、左目デ。世界ガ変ワルヨ?』

     楽しそうに細まる眼差し。愉快というよりは、優しくて、気が変になりそうだ。

     まるで、慈しむように伸ばされる指。触れる肌が、あたたかい事すら、錯覚だと言い聞かせた。

     『ホウラ、思イ出セ。オ前ハ、俺ノ他ニモ、抱エテイルダロウ………?』

     呟き、口吻けられた、左目。愛おしそうな仕草に、零れそうな涙が自分でも信じられない。

     左目は、特別だ。愛した人が残してくれた、ただひとつの傷跡。自分がたった一人を愛した証。それに無抵抗なまま触れるこそを許した自分が、口惜しい。

     しかも、その仕草を、懐かしい……なんて。

     愛した人を壊してしまった、人なのに。それでもこの存在は、マナのたった一人大事に抱えていた幻影の成れの果てだ。

     『大丈夫。マダ、見テイテアゲヨウ。まなニ免ジテ』

     告げる言葉が優しかった。柔らかかった。懐かしい人の声に重なる、その抑揚。

     それら全てを振り切り、目を見開いた。零れたもの全て舐めとった青年は楽しげに笑い、そっと包むように少年を抱き締める。

     『オ前ハ、まなノ愛シタ、命ダカラ』

     愛おしそうな声。それはお前だろうと、罵ってやりたい衝動を耐えて、闇の中、現実を手繰り寄せるように左目の熱に集中した。

     早く戻らなくては。こんな場所で蹲っている暇はない。

     イノセンスで貫かれたくらい、どうって事はない。とうの昔に、自分のイノセンスで切り裂いた事もある身体だ。

     大丈夫だから、戻らなくては。まだ、自分を終わらせてはいけない。やるべき事が残っている。

     …………還らないと。そうして、大丈夫と笑おう。

     多くの苦しみも辛さも痛みも、残るだろうけれど。それでも、あの二人をせめて、笑みで最期を迎えさせなくては。

     自分の痛みは、後でいい。全部、自分で抱えられる。

     だからせめて、あの悲しい過去が悲しいまま終わらない為に、出来る事を。

     伸ばした指の先、ピエロ姿のマナが、笑った。

     目を見開いて見つめてみれば、上手にジャグリングが出来た日に褒めてくれた、あの優しい笑みで両手を広げている。

     呼びかければ、抱きとめてくれる気がして、叫ぶようにその名を呼んだ。

     

     『マナ……………!』

     

     声に、答えは無かったけれど。

     

     それでも、自分が進む為の道を、答えを、教えてくれた。

     

     

     

     ねえ、マナ。この呪いは、あなたの愛だと。

     進みゆく道を見極める為の、厳しく深い、愛だったのだと。

     

     それを証明する為に、愚かかもしれないこの選択を支えて。

     

     

     あの二人を、誰にも穢させず、包みたいんだ。

     

     

     だって彼は、とても僕によく似た、

     痛みを与えられる事で傷から目を逸らす、愚かで向こう見ずな子供だから。

     他者から与えられる怒りや恨みや怨嗟で、

     己の罪を購い、幸せから遠ざかろうとする、馬鹿な子供だから。

     

     

     幸せになっていいんだよって、いってもいいでしょう?

     

     

     

     

     ……………あなたが笑いかけてくれるから、僕はこの手を躊躇わない。

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