■カーテン、無差別、羊■(カイ爆)
芝生の上で眠る幼い肢体。木漏れ日のカーテンに包まれて蛹の中、孵化を待つかのようだ。あどけなさの残る頬に触れようと眼差しを向け、平伏すように睫毛を落とした。薄い傷跡。数知れぬそれを不遜な笑みで受け入れる子供。…世界の糧と成り得る小さな肩を守れる事を、祈った。
■ライブ、月、ドーピング■(ジバクくん:デッド)
三 日月が浮かぶ空。見上げれば闇色。身に纏う色と同じその中に、微かに細い金の月。……自分の半身を思い、そっと瞼を落とす。この国は夜の国。朝日と共に消 える国。それでも確かに相対した、覇者たる子供の小さな雄々しい背中。……いつかは潰える存在にさえ与えられた日差しに、小さく笑んだ。
■難易度、猫、時計(ハヤデ)■
難 攻不落の不夜城に、今日もやって来た。枯れ木に幾多と吊るされた不格好なランプ。今日もひとつ増やした。それに呆れたようにオルガンの音色が消えた。しな やかな漆黒が文句を囁きながら音もなく歩む。ゆっくりと、自分に向かって。嬉しくて笑めば、幽かな三日月も笑って自分達を照らした。
■好き、緑、濃厚■(ハヤデ)
いっ そ息苦しいほどに空気が濃い。過呼吸にでもなりそうな木々の密集。ジャングルなど馴染みない身にはただの凶器に近い酸素濃度だ。掠れるような吐息を落と し、樹に寄り掛かった。…暑い日差し。やはり馴染みない全て。それでも、この国は嫌いじゃない。見上げた太陽を見つめ、思った。
■虹、マグカップ、筋肉痛■(真天)
お 天気雨を見上げながらホットミルクを口にした。まだ名もない、授かったばかりで自分以外誰も知り得ない命を抱き締めながら。傍らのベッドでは戦場から帰っ てきたばかりの包帯まみれの戦士。彼の分のミルクティーを淹れて、また空を見よう。きっと鮮やかな虹が架かるだろうから。
■ 意識、ネックレス、速度 ■(真天)←お題勘違いでこちらで書いてしまいました……
衝 撃と痛み。嘲笑いもせずに見下ろす弟の姿。…大きくなった、あの幼かった彼が。自分を追い掛けていた頃を思い出し、そっと睫毛を落とす。急激に遠退く意 識。何か囁く弟の声。それは慟哭の音。王位継承者の胸飾りがしゃらりと奏でた音に、それは消えた。残されたのは、孤独な王族の末裔。…早く、早くあの子 を、誰か抱き締めてあげて。零れたのは唯一度の、たった一粒の、涙。
■涙腺、ご飯、かさぶた■(カイ爆)
今日は町まで辿 り着けず、野宿だった。早々に高いびきをかく少女と少年に呆れた眼差しを向けながら、子供は聖霊とおかずの取り合いを再開した。微かな唸り声。見遣れば浮 かぶ少女の眦の水滴。この身に受けた傷よりも、この二人が背負う痛みこそが癒えればいい。薬草など効かない傷が最も癒えづらいと、溜め息を落とした。
■コーヒー、無作為、意識■(ハヤデ)
ぼんやりと欠伸を噛み殺して窓の外を見遣った。明るい日差しに小鳥の鳴き声。マグカップを片手に室内を横切り歩み寄れば、確かにそこにいる漆黒の影。また、朝日を見遣る。差し出したマグカップを受けとる低い体温。全てが当たり前になった現実に、知らず笑みが浮かんだ。
■乳、チョコケーキ、赤■(パプワ)
甘 めのミルクチョコに生クリーム。オレンジピール入り、チェリーも作ろう。腹ぺこな子供達も島の住人も、今か今かと待っている。金のストライプの袋に赤いリ ボン。それに一人2個ずつ小分けして大きな籠に敷き詰め、ドアを開けた。期待に満ちた沢山の眼差しが、口早にトリックオアリートと叫んだ。(パプワ)
■約束、記憶、虹(PAPUWA:シンタロー)■
空に掛かる一本竹。そこから続くプリズム。今もまだ眠り続けているか解らない幼い子供。初めての別れの時とは違う、感謝の言葉を捧げて別れた。…君は今どこで眠っているだろう。またいつか出会う日に、胸を張って笑う為、今日の一歩を刻んだ。
■ゲーム、幼児、夏休み■(南国パプワ)
ほ らシンタロー、見えるか?相変わらずのパプワ晴れだ!空も海も真っ青で、でも色が違う。それに驚いていたのは多分、お前が初めてだ。何せ僕達は生まれた時 からそれが当たり前だからな。今日も一杯一緒に遊んで、お前の知らないもの、一杯見せてやるぞ。お前は僕の友達だから、僕の知るもの全部、お前にも知って ほしいんだ。
■名前、モデル、日曜日■(ザハミル)
のんきな休日、弟が驚いたような声を出した。テレビにはよく知らない芸能人。それに驚いたらしいと気付いて目を瞬かせた。くつり、隣で笑みが落ちる。珍しい名前だなと呟かれて見遣ってみれば、そこには宇宙の最果てにいる人の名が書かれていた。
■録画、手足、虹■(ザハミル)
ビ デオレターを送ろう。そんな話はかなり前からあった。ただ忙し過ぎて撮影出来なかっただけだ。どうせなら、地球の姿を映したい。だから部屋ではなく外がよ かった。とある日の午後、夕立のあと、鮮やかな虹を見上げ、二人顔を見合わせて急用だと叫んで駆け出した。まるで小さい頃の弟のようだと、笑い合った。
■ミカン、ボタン、国■(ザハミル)
成 長に合わせて色々なものが変わっていく。腹立たしくも疾うに自分など追い越した背は更に伸びて一年前の服など着れはしなかった。困ったものだと文句を呟い たら、彼は炬燵に猫のように入り込んで笑う。母親のようだと揶揄する彼の手に持つミカンを取り上げて食べてしまっても、やっぱり彼は笑ったままだった。
■書簡、CD、薔薇色■(ザハミル)
ド キドキとその日はずっと外のバイクの音を待っていた。出来るだけ平常心で。それでもカタカタ動くカップに彼が笑って背中から抱き締めた。最近覚えた曲をハ ミングで歌う、まるで動揺のない彼が配送バイクに気付く。駆け出して確認した書類。上気した頬で戻れば、彼は当たり前のようにおめでとうと言った。
■ぬくもり、ご飯、通信■(ザハミル)
遠 い宇宙の彼方を思って、ただ努力を重ねる弟。自分に出来る事は少なくて、与える知識を持つ彼に小さな八つ当たり。…全部バレてる相手にごめんなさいなんて 言えなくて。代わりに彼の好きなおかずだらけの夕飯になった。思う人と言葉さえ交わせない弟は、それでも嬉しそうに食べていた。
■濃厚、約束、グラス■(ザハミル)
とぷとぷと注いだカルピス。イライラに比例するようにその乳白色はグラスの中の容量を増していった。別にきちんと交わしたわけではない約束だ。怒る程ではないと解っている。それでも忘れられれば腹が立つのだと、ほとんど原液のカルピスをドンッと彼の前に置いた。
■緑、ゲーム、時計■(ザハミル)
宇宙船の中の娯楽は少ない。いくら重力制御を可能としても、外で駆け回れないのだから当然だ。時間を見計らっては掛かってくる通信。取り出したのはGAC。今日も地球王者決定戦だなと、隣で呑気に眺める初代マスターが笑った。
■意識、ネックレス、速度■(ザハミル)
年頃なら、少しくらいの洒落っ気は許される。第一、一応のデートだ。…ただの買い出しだけれど。バレない程度、でも少しだけ。母から誕生日に贈られた異国の胸飾りをささやかに添えて、少し可愛らしいワンピースを着た。階下で待つ彼が対面した時、少しでも驚けばいいのに。

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