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気の向くまま、思うがままの行動記録ですよ。
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    愛の国のクッキー。

     スロヴェニアが愛の国だそうですよ。
    英語表記にするとLOVEがスペルに入る国名だからとか。
    そしてそのため、国中ハートマークが一杯だそうです。お土産品もここぞとばかりにハートを組み込んで(笑)
    その中の、男性から女性に贈る人気の贈り物、というものの紹介が。

    クッキーなの、ハートの。
    お花畑みたいに一杯の華やかなデコレーションがされていて。
    真ん中に『君は僕の太陽だ』とか『あなたを愛しています』とか、そんな愛の告白が書かれているとか。
    これを買う勇気の方が素晴らしいと思うよ、私は…………!

    そんなわけで、上記を前提に、ミツナル小説をどうぞ☆



    「なるほどくんなるほどくん!見てコレ、可愛いー!!」
    「これって………クッキー?」
    「そうだよ!可愛いよね、お花とか一杯デコってるよ〜」
    「これって食べられるのかな。凄い固そうじゃないか?」
    「駄目だな〜なるほどくん!ロマンがないよ!」
    「な、なんだよ、いきなり」
    「これはね、男性から女性に贈るクッキーで、真ん中に愛の言葉が書かれているんだよ。シャイな彼からのあっつい贈り物☆だってさ!」
    「………………いや、これ買える時点でシャイじゃないんじゃないか、それ」
    「もう!そういう問題じゃないんだよ、なるほどくんってば!」
    「はいはい。じゃあ今度クッキー買ってきたら、デコペンで『感謝』って書いてあげるよ」
    「やったー!!!やっぱ話が解るね〜♪」


    なんて話があったのは、つい先日だった。
    思い出しながら、成歩堂は目の前の物体をどう対処すべきかに悩んでしまう。
    海外研修から久しぶりの帰国を果たした御剣は、不可解そうにいつもの眉間の皺を3割増にして成歩堂を見ている。………可能なら、同じものを成歩堂も刻んでやりたいと思う険しい顔だ。
    けれどその眼差しは戸惑いと困惑と………バレるかも知れない事への焦りが見て取れて、成歩堂は投げつけたい衝動をどうにか耐えている真っ最中だった。
    手の中には大振りのハートのクッキー。
    そのハートには様々な色で可愛らしく花が描かれていて、パッと見はとても素敵なお土産かもしれない。…………男が男に買うのはどうかと思うという、その一点さえ抜かせば。
    だからこその困惑と思っている相手は、渡す時にみんなで食べればいいと言って、同じものを真宵や春美の分も用意してくれていた。その辺りのそつのなさは流石だ、
    ………そして、二人の分のクッキーには可愛い花とミツバチが描かれていて、成歩堂に渡した分には、中央に何やら文字が書かれている事も、さりげなく気付かれないようにしている。
    そのクッキーの意味を、まさか成歩堂が知っている筈がないと思うのは当然だ。先日のテレビがなければ知らなかった。そこで真宵が騒がなければ、記憶にだって残らなかっただろう。
    けれど残念ながら成歩堂はそれを見ていて、きちんと記憶してしまっている。テレビで見たものと同じようなクッキーにデコレーション。読めないけれど、きっと情熱的な愛の言葉なのだろう、中央の文字。
    解っていてこれを買ってきたのか。たまたま見て、真宵達が喜ぶと思って用意したのか。
    ………考えるまでもない準備の周到さに、成歩堂は小さく溜め息を吐いて、御剣を見遣る。
    戸惑って揺れる眼差し以外、いつだって険しく刻まれた眉間の皺と同じ鋭い容姿。折角整っているその容貌すら凶器のように鋭利にしてしまう不器用な男。
    未だその言葉を捧げる事には躊躇いがあって。
    ……………彼はどうも自分に必要とされているという自覚がない。
    甘やかさないのはお互い様だ。彼が対峙する法廷で一瞬とて気を抜かないように、自分だって彼を相手に手管を披露するような真似、出来るゆとりも経験もない。
    「こっちが、僕に?」
    確認するように、敢えて3つ全部を持って、文字の刻まれたひとつを指で摘まみ上げる。
    首を傾げる御剣は、何か勘づいたのか、途端に視線を泳がせ挙動不審に身体を揺すった。
    誤摩化すべきかどうか悩むそれは、もう既に解答を差し出したようなものだ。こんな小さなやりとりで全て晒してしまう癖に、彼は未だ自分が何も気付かないでいると本気で思い込んでいるのだから、相変わらずの視野の狭さだ。
    思い、笑んでしまった。…………隣にいる事で、自分の見る部分も、彼に伝わるだろうか。
    一所だけを睨むように見つめるその眼差しを、もっと柔らかく多くのものを見るように。
    もしも彼が勇気を出して頷いてくれたなら、告げてみようか。

    このクッキーは食べるのではなく、飾るのだと。

    彼がそうして欲しいのだろう答えを脳裏で浮かべながら、柔らかく唇が笑む。


    どんどんと赤く染まる彼の頬。戦慄くような唇。


    そうして、紡がれた言葉に、ただ心からの笑みを捧げよう。





    彼の精一杯の不器用な勇気を、たたえて。

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