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気の向くまま、思うがままの行動記録ですよ。
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    カイ爆。

    人の書いたものを見ると書きたくなるよ。

    しかし、私はやはりジバクを書くとセリフがなくなるな。
    結局今回は一回も話さぬまま終わったよ。まあ出会うまでの話だったせいだがな。

    そんな事はいつものことと、軽くスルーしてくれれば幸い。




     空が、綺麗だった。
     見上げた先に広がる空は真っ青で、雲ひとつない。見事な五月晴れだ。
     満足気にそれを見上げた子供は伸びをして、大きく深呼吸をした。肺に流れ込む空気すら、青く染まって身体を空に溶かしそうだった。
     楽しげに唇を笑みに染めたその頬を、肩に乗った聖霊がにかりと笑って叩く。もっと沢山遊びたいというその仕草に、仕方がなさそうに苦笑に変えた唇で頷き、子供は聖霊を掴むと地面に下ろしてやった。
     足が地面につくと同時に小さな手足をばたつかせるようにして駆け回り始めた聖霊を見遣り、次いで子供は辺りの様子を確かめるように首を巡らせた。
     山の裾野の、森の中だ。広場といって差し支えのないここは、適度に日差しが入り込み空気もひやりと涼しく、心地よい。
     木々のざわめきの中、木漏れ日は綺麗な青とともに糸を成し、美しい自然の織物を垣間見せる。さらさらと聞こえるせせらぎは、清水が沸き流れる川の音だろう。ここまで来る途中には見かけなかったが、どこにそれがあっても違和感のない調和のとれた自然の美だ。
     吸い込んだ空気すらご馳走だ。思い、楽しげに子供はそこに座り込むと、そのまま顔を上げて空を映す。
     ……川のせせらぎは耳に、鮮やかな空は目に、流れる新鮮な空気は唇に、濃く漂う木々の木漏れ日の香りは鼻に、ご馳走だろう。
     五感の大部分を満足させる素晴らしい場所だ。自然、子供はその唇に笑みを浮かべた。
     あとひとつ、五感をそろわせるには必要だ。が、それはまだもう少し、時間がかかるだろう。思い、やわらかく細められた眼差しの先、木漏れ日が優しく子守唄を唄うようにざわめいた。
     聖霊は、遊びに行っている。彼の事だ、何かあっても自分で対処出来るだろうし、最悪自爆する事で自分に教える。
     それならば少し、ここに未だ現れない存在を待つ間、目を瞑っていても問題はないだろう。そう決めて、子供はそっと目蓋を落とした。
     隠された瞳には、柔らかな光が注がれ暖かい赤を浮かばせた。
     小さくそれに苦笑を落とし、次に目を開ける時にはそれが自分の顔を覗いているだろう予感に緩やかな呼気を落とす。
     ………早く来いと思いながら、もっと時間がかかる方がいいとも思う矛盾を楽しみ、子供はまどろみの中にたゆたった。

     

     走っていた。これ以上ないほどに、精一杯走っていた。
     テレポーテーションが使えればいいけれど、よりにもよって落ち合うこの森は磁場が狂っていて、まだ不慣れな自分にはテレポートを許さない。空間を感知しようとしても弾かれてしまうのだ。 
     少年は頬を滴る汗を拭う間も惜しんで走った。……この先に待つ人に会うのがどれ程ぶりかを考えたら、どうしたって気が急いた。
     世界を平和に導いてのち、子供は混沌とした各地を鎮める為に駆け回っていて、会える機会などほとんどなかった。
     ついていかない事を選び、自国に残りその復興に尽力尽くす事を決めたのは、自分自身だ。それを悔やむつもりはないし、間違いだとも思わない。
     ………ただ、そうであるが故に愛しい人に会える時間が僅かしかない事だけが、寂しかった。
     彼、は。……あまりに潔く歩む人だから。
     自分の腕など不要である事を知っているし、ただ一人でも前を進む事の出来るしなやかさも頑強さも持っているだろう。隣に誰もいなくても、彼は不敵に笑んで進んでしまう人だ。
     だから、会いたかった。……知ってほしかった。
     ただ独り進むのではなく、彼に伸ばされる腕が数多くあり、それらはいつだって望まれれば馳せ参じる事を喜びとしている事を。
     額から零れた汗が目に入り、視界を霞めた。眉を顰めてそれを拭い、鈍った足を感覚だけで戻して進んだ。目を瞑っていても、気配だけで木々を避けるくらいは出来る。
     けれど少年は必死になって目を擦り視界を確保しようとした。
     もう、あと少しで待ち合わせた場所に着く。今はもう通信機としてしか使わないGCウオッチを見下ろせば、この先にいる子供を示す赤い点が瞬いていた。
     あと、少し。ほんの数十mだ。
     会えるその期待にほころぶ唇に気付きもせず、少年は更にスピードを加速させて駆けた。
     ………視界が、唐突に開けた。木々に覆われていたいままでの獣道が嘘のような、突如としてそこにある広場。そう大きくはないその隙間に、寝転がる小さな影。
     変わらないと、少年はくすりと笑んだ。
     細い手足、小さな肩、まだ未成熟な身体は未知の可能性を秘めたまま、未来を待ち構えてうずうずしているように見える。
     そっと、先程までは急いていた足先を止めて、ゆっくりと呼吸をした。整えた息の先、木漏れ日が優しく肌を包み込む。それに誘われ見上げた先、鮮やかな青空が葉っぱのフレームに囲まれて見える。子供が好きそうな、まっさらな青だ。
     落ち着いた呼気を確認しながら、少年は歩を進めた。気配を消して、足音もさせずに。
     疲れているのかもしれない。ただ待ちくたびれただけかもしれない。……それを判断するには、子供の顔を覗かなくては解らなかった。
     近くに聖霊の気配はなく、あの向こう見ずで好奇心旺盛な聖霊はどこかに遊びに行ってしまっているらしい事に気付いた。長い耳を揺らして聴覚をフルに活用すれば、ほんの微か、水音がする。せせらぎに混じった、水しぶきの音。きっと近くの川で遊んでいるのだろう聖霊を思い、小さく笑った。
     それなら、大丈夫だ。
     あの聖霊が子供を置いて遊んでいるのなら、子供の体調に問題はないだろう。何かあれば真っ先に告げ口をして、毎回子供に爪弾かれるのだから。
     ほっと息を吐き、少年は子供の足元までやってきた。柔らかな木漏れ日に彩られた子供は、眠っている。
     その顔色は健やかで、怪我も傷も何もない。目で見る場所だけとはいえ無事である事に安堵して、そっと、躊躇いそうな指先を子供の頬に滑らせた。
     久方振りの、体温だ。指先を伝って、喉を圧迫するほどの歓喜が沸き起こった。

     


     さらりと額にかかる前髪を撫でてどかし、その顔を覗きこんで。

     小さくやわらかく、子供の名を呼んだ。

     


     震えるようにその睫毛が蠢くまでの、ほんの数瞬。

     


     目を開けた子供が、小さくささやく最後のひとつという言葉の意味も解らぬまま。

     

     

     

     

     ………泣きたいほどに満たされて、その頬のぬくもりに平伏した。

     

     

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